Greeting
代表 服部陽子
「ほら、向こうに見える灯りは家の広間の蝋燭よ。あんな小さな燈火がこんなに遠くまで光を放つとは!きっとあのようにいい行為は悪い世の中を照らすのね。」
これは『ベニスの商人』の女主人公ポーシャのセリフです。シェイクスピアの作品には『リア王』や『ハムレット』などに有名な名セリフがたくさんあるのですが、私はこのあまり知られていないポーシャのセリフが、自分の人生の目指すところを励ましてくれているように思えて、とても好きです。暗い場所に光を当て、苦しい顔、悲しい顔の人々を笑顔に変えていくことができたら!そんな人生が送れたら素敵だなあといつも思っています。
さて、私とシェイクスピアとの関わりは、学生時代のクラブ活動で英語劇の公演をしたことや大学の講義で少しだけ勉強したことです。社会人になってからは作品を読んだり、上演されるシェイクスピア作品を観劇したりということでした。どれもそれぞれの楽しさがあるのですが、私にとってのシェイクスピアの一番の楽しみ方は、舞台に立ってそのセリフを言うことだと気づきました。作品の人物になってセリフを言う時、つまり声に出して言ってみた時、その中身が自分の中にぐっと深く入りこんで来るのを感じるのです。一緒に舞台に立っている人たちのセリフを聞く時も同じように入ってきます。
シェイクスピアの舞台をやりたい!と思うようになりました。しかし、シェイクスピア劇を上演しているのは劇団員や役者の人たちだけで、仕事を持つ社会人が舞台に立つ場というのはどこにも見当たらなかったのです。
そこで、職業を持つ社会人とプロの役者が一緒に一つの舞台を創り、それをいわゆるシェイクスピア好きの人たちだけでなく、広く社会のたくさんの方々に観ていただき、共にシェイクスピアの楽しさ、素晴らしさを体験できたらと願い、ウイリアム・シェイクスピア・フェローズを立ち上げました。劇団の稽古と違って、会社の仕事をしながらの社会人の稽古は、まず時間を作り出すのに一苦労。そして、十代、二十代の頃とは違って身体も頭も硬くなってきているので、セリフの覚えも遅い、身体もなかなかすっとは動かない。しかし、5年、10年と続けているうちには誰もが例外なく自分のスタイルでシェイクスピアに関わり、舞台に立つことを覚え、日常と全く違う世界で輝き始めるのです。自身の実体験と登場人物のセリフが重なり合い、深みと味わいのあるセリフが言えるのは社会人だからこそと感じます。その人の生きて来た人生や、ひととなりが滲み出るセリフには、聞く人を引き付け、魅了する力があるのでしょう。
ウイリアム・シェイクスピア・フェローズは、そこに関わるすべてのみなさまにより豊かな人生を送っていただく扉を開いています。
<プロフィール>
米山化学株式会社 代表取締役社長。
上智大学文学部英文学科卒業後、公益社団法人 国際日本語普及協会講師、学習院大学日本語日本文学科講師を経て、現在同協会理事。
国際ロータリー2750地区ガバナー(2018-19)
学生時代に英語劇部に所属したことから、シェイクスピアに興味を持つようになり、社会人となって2015年にプロアマでシェイクスピア劇を演じるグループ 「ウイリアム・シェイクスピア・フェローズ」を結成。